遺言・遺産相続の弁護士コラム

【例文あり】遺言書の書き方・ルールとは?無効にしないための注意点を解説

遺言書は、自分で書くことができますが、要件や様式を正しく守っていないと、せっかく作成しても無効になってしまうことがあります。
しかし、「どうやって書けばいいのかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこのコラムでは、自分で自筆証書遺言を作成する際の要件・ルールに加え、書き方のポイントや注意点を解説します。文例なども参考にしながら、適切な遺言書の書き方を理解していきましょう。

この記事でわかること
  1. 遺言書を書くために準備すべきこと
  2. 遺言書の書き方・ルール
  3. 遺言書を書くときの注意点

自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言とは、被相続人自身が自筆で作成する遺言書です。
財産目録を除く遺言の全文・日付・氏名を自筆し、押印して作成します。財産目録のみ、パソコンや代筆でも作成可能です。

自筆証書遺言には、以下のメリット・デメリットがあります。

【メリット】
• 作成に費用がかからない
• いつでも書き直すことができる
• 遺言の内容を自分以外に秘密にできる

【デメリット】
• 要件を満たしていないと、遺言が無効になることがある
• 遺言書が紛失したり、死後に発見されなかったりするおそれがある
• 遺言書が勝手に書き換えられたり、隠されたりするおそれがある
• 相続開始後遅滞なく家庭裁判所での検認手続が必要

自筆証書遺言書保管制度 も利用可能

自筆証書遺言書を作成する場合、「自筆証書遺言書保管制度」の利用を検討してもよいでしょう。

「自筆証書遺言書保管制度」とは、遺言者が自筆証書遺言書を法務局に持参することで保管してもらえる制度です。この制度は2020年7月10日にスタートし、全国の法務局で利用できるようになりました。

制度を利用するには1件につき3,900円の費用がかかりますが、 遺言書が紛失したり、死後に発見されなかったり、遺言書が勝手に書き換えられたりといったリスクを回避できます。
また、家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人立会いのもと遺言書の内容を確認する「検認手続」も不要になるため、遺言書の内容を速やかに実行できるというメリットもあります。

希望すれば、死亡時通知のサービスも利用可能です。
遺言書の保管所において遺言者の死亡の事実が確認できたときに「遺言書が 遺言書保管所に保管されている」というお知らせが相続人等に届くため、遺言書を発見してもらいやすくなります。

公正証書遺言として作成する方法もある

自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言として遺言書を作成することもできます。
公正証書遺言は、遺言者が証人2人以上の立会いのもと、公証役場の公証人に遺言内容を口頭で伝え、その内容をもとに公証人が作成する遺言書です。

公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されます。
そのため、自筆証書遺言のように勝手に書き換えられたり、隠されたりするおそれがありません。また、家庭裁判所の検認手続も不要というメリットもあります。

一方で、遺言の内容を秘密にできない点や、手間がかかる点はデメリットといえるかもしれません。

自筆証書遺言を書く前の準備

実際に遺言書を書く前に、遺言書に書くべき内容や自分の財産についてまとめ、準備しておくことが大切です。スムーズに遺言書を作成するためにも、どんな準備をすればよいか知っておきましょう。

遺言書に書くことを決める

遺言書の内容は、原則として遺言者が自由に決めて構いません。ただし、記載することで法的な意味を持つ事項は「遺言事項」として定められています。

遺言事項のうち、主なものは下記のとおりです。

  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定と分割の禁止
  • 相続財産の処分(遺贈)
  • 相続人の廃除
  • 後見人の指定
  • 内縁の妻と子どもの認知
  • 遺言執行者の指定または委託
  • 配偶者居住権の設定

上記を参考に、ご自身の状況や希望に応じて遺言書に記載することを決めましょう。

財産目録を作成する

遺言書には、自分の財産をリスト化した「財産目録」を作成して添付できます。財産目録はプラスの財産・マイナスの財産をまとめた一覧表です。

必ず作成しなければならないものではありませんが、財産が多岐にわたる場合には、相続させる財産の内容を明確にできるというメリットがあります。

なお、自筆証書遺言であっても財産目録は、代筆やパソコンを利用して作成することができます。また、預貯金通帳の写しや不動産全部事項証明書などの資料を添付することも可能です。

ただし、代筆・パソコンで作成した目録や資料を添付する場合、各ページに署名・押印が必要になるため注意しましょう。

自筆証書遺言の書き方は?守るべき要件と様式

自筆証書遺言の要件は、民法第968条第1項で「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。

また、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、決められた様式を守らなければなりません。
要件・様式を守らないと、せっかく遺言書を書いても無効となってしまうため、必ず守るようにしましょう。

要件・ルール

民法で定められた要件・ルールは以下のとおりです。

  • 全文を自筆で書く
  • 作成日付を明記する
  • 署名・押印する
  • 訂正のルールを守る

それぞれ詳しく見ていきましょう。

全文を自筆で書く

自筆証書遺言は、その全文を遺言者が自筆しなければなりません
ただし、財産目録はパソコンを使ったり、資料のコピーを添付したりすることができます。その場合でも、添付書面のすべてのページに署名・押印が必要です。

作成日付を明記する

遺言書の作成日は、正確に漏れがないように記載しましょう。「令和○年○月吉日」などの書き方は、具体的な日付が特定できないため認められません。

なお、複数の遺言書がある場合、日付が新しいものが有効になります。

署名・押印する

遺言書には、戸籍上の氏名をフルネームで正確に記載し、押印します。
印鑑の押し忘れがある場合や、陰影が不明瞭または消えている場合などは、遺言書が無効になるおそれがあるため注意しましょう。

使用する印鑑は認印でも問題ありませんが、スタンプ印を使用することは避けたほうがよいといえます。
これは、 スタンプ印で使用されているインクは、時間が経つと消えてしまうおそれがあるためです 。

訂正のルールを守る

遺言書の文章を訂正する場合にも、ルールがあるため注意が必要です。

訂正する場合は、間違った部分を二重線で消したうえで訂正印を押し、正しい文言を記載します。
加筆のみする場合は、吹き出しを使って場所を指示して加筆し、近くに訂正印を押します。

そのうえで、余白に変更場所と変更した旨を記載し、署名してください。
修正液や修正テープの使用や塗りつぶしなどによる訂正は、無効となるため注意しましょう。

様式(自筆証書遺言書保管制度を利用する場合)

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、下記のとおり、決められた様式で遺言書を作成する必要があります。

<様式>
サイズ:A4サイズ
模様等:文字が読みにくい模様や彩色がないもの(一般的な罫線は問題ない)
余白:上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mmを最低限必ず確保
記載面:片面のみ
ページ番号:総ページ数がわかるよう各ページに記載
綴り:複数ページある場合も綴じずに全ページバラバラのまま提出

なお、自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合はこのような様式の制限はありません。

自筆証書遺言の書き方の見本

以下は、遺言書の書き方の見本です。見本は横書きですが、横書き、縦書きを問いません。

自筆証書遺言の書き方のポイント5つ

自筆証書遺言を書く際は、上記で説明したルール以外にも注意したいポイントがあります。覚えておきたい5つのポイントを見ていきましょう。

①消えにくい筆記具を使用する

自筆証書遺言を書くときは、長期保存のため、ボールペン、筆ペン、毛筆など容易に消えない筆記用具を使用します。
鉛筆やシャープペンシルは消えやすく、改ざんのおそれもあるため、使用しないようにしましょう。

②誰に何を相続させるのか明示する

誰に何を相続させるかをわかりやすく明示することが必要です。
「金融資産を半分ずつ」のようなあいまいな書き方をすると、相続人間のトラブルの発生を招くことにもなりますので注意しましょう。

たとえば、「〇〇銀行〇〇支店 定期預金口座 口座番号○○○○」などと具体的に記載します。

③あいまいな表現は避ける

遺言書を書くとき、あいまいな表現で書くのは避けましょう。
たとえば、「任せる」、「託す」、「譲る」、「与える」などの表現には、さまざまな解釈があるためです。

特定の相続人に特定の財産を受け継がせたい場合、「相続させる」、「遺贈する」などの文言を使います。

④遺留分を侵害しない

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)が、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。遺留分は、被相続人の生前の贈与または遺贈によっても奪われることはありません。

遺留分権利者は、兄弟姉妹を除く相続人とその承継人です。
被相続人が遺言で財産を遺留分権利者以外に遺贈すると記載し、遺留分権利者が遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は遺留分を侵害されたことになります。
このとき遺留分権利者は、遺贈を受けた者に対し、その侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(遺留分侵害額請求)。

遺言書における「全財産を特定の一人に相続させる」などの記載は、無効ではないものの、遺留分を侵害することになり、遺贈を受けた人とほかの相続人との間でトラブルを生じさせるおそれがあるため注意が必要です。

⑤1人1人が自分の分を作成する

遺言書は1人1人が自分の分を作成する必要があり、共同の遺言書を作成することは禁止されています。たとえば、夫婦が共同して作成した遺言書は無効です。

適切な遺言書を書くためには?

このように遺言書は、適切に作成しないと無効になったり、トラブルに繋がったりするおそれがあります。そのため、遺言書の作成は、法律の知識を有した弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士であれば、遺言書の守るべき形式やルール、遺言書で実現したい内容をどのように記載すればよいかを熟知しています。そのため、遺言書が無効になるリスクを大きく下げるとともに、ご自身のご意向を踏まえた文面の作成が可能です。
また、適切に遺言書作成ができるだけでなく、亡くなったあとの遺言執行や相続人間のトラブルへの対応など、幅広い相続手続を一貫してサポートすることもできます。

アディーレなら遺言書作成のサポートが可能

アディーレ法律事務所では、遺言書作成に必要な書類を依頼者の方に代わって収集し(※)、遺言の原案を作成いたします。

  • 一部の必要資料については、依頼者の方にご用意いただく場合がございます。

そのため、アディーレにご依頼いただくことで依頼者の方のご希望に沿った内容かつ法的に有効な遺言書を作成することができます。
あなたの負担を軽減し、漏れなくスムーズに遺言書を作成するためにも、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

自筆証書遺言書は、手軽で費用がかからないなどのメリットも多いですが、民法に規定された方式に従ったものでなければ無効になってしまいます。そのため、必要事項を漏れなく正確に記載し、ルールを守って作成することが重要です。

ご自身で遺言書を作成するのが不安であれば、弁護士にご相談・ご依頼いただくことをおすすめします。弁護士にご依頼いただくことで、正確な遺言書を作成し、遺言執行や相続人間のトラブルへの対応など幅広い相続手続に万全を期すことができます。

アディーレ法律事務所では、遺言書作成や相続のご相談・ご依頼を積極的に承っております。
また、「損はさせない保証」により、ご依頼いただいたにもかかわらず成果を得られなかった場合、原則としてお客さまの経済的利益を超える費用をお支払いいただくことはありません(※)。

アディーレ法律事務所なら、遺言・遺産相続に関するご相談は何度でも無料ですので、まずはお気軽にお問合せください。

  • ご依頼いただく内容によって保証の内容が異なるため、詳細はお気軽にお問合せください。
橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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