遺言・遺産相続の弁護士コラム

被相続人とは亡くなった方のこと。相続人との関係や相続順位を弁護士が解説

身近な方が亡くなったあと、銀行や役所の書類で「被相続人」という言葉を目にして、戸惑ってしまう方も多いでしょう。「誰の名前を書けばいいの?」「これから何をすればいい?」といった不安を抱えながら、慣れない手続を進めるのは大変な負担だと思います。

そこで本記事では、被相続人とは何か、法律で決まった相続の順位、守るべき期限や財産調査の具体的な進め方まで詳しく解説します。
この記事で相続手続の全体像がわかり、不備やトラブルを未然に防いでスムーズに遺産整理を進められるようになれば幸いです。

この記事でわかること
  1. 被相続人と相続人の定義
  2. 法定相続人の優先順位と相続割合
  3. 相続発生後に必要な手続とその期限

被相続人(ひそうぞくにん)とは?

被相続人とは、「亡くなった方」を指します。日常的には「故人」や「亡くなった人」と表現されますが、遺産相続の場面では「被相続人」という言葉が使われます。「被相続人=死亡したあとに財産を遺す人」であり、相続手続に必要な書類の「被相続人」の欄には亡くなった方の名前を記入します。
たとえば、おじいさまが亡くなった場合には、おじいさまが「被相続人」となります。

被相続人の遺産を受け継ぐのは誰?

実際に被相続人の財産を受け継ぐ人は、「相続人」と呼ばれます。
ここで、相続人に関連した用語について整理しておきます。

用語時期詳細
推定相続人被相続人の存命中今、相続が開始されたら相続人になる見込みのある人。
相続が始まるまでに離婚・死亡などで親族関係に変化があった場合には変わる可能性がある。
法定相続人相続開始後民法で決められた相続の権利を持つ人。
子がいる推定相続人が死亡した場合、その子が代襲相続人として法定相続人になる可能性がある。
相続人相続開始後法定相続人であり、かつ、実際に相続する人。法定相続人であっても、相続放棄などで相続権を失った人は含まれない。

法定相続人

民法のルールに基づいて、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利を有する方のことです。
亡くなった人(被相続人)の配偶者は常に法定相続人に該当します。また、配偶者以外の親族には下記のような優先順位があります。

順位相続人の種類
具体的な対象
配偶者配偶者夫または妻(常に相続人になる)
第1順位直系卑属子(子が亡くなっている場合は孫:代襲相続)
第2順位直系尊属父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
第3順位兄弟姉妹兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪:代襲相続)

法定相続人の範囲と相続順位についてはのちほど解説します。

相続人以外で遺産を受け取れる人もいる

「法定相続人」の枠組みに入っていない方でも、遺産を受け取れるケースがあります。

受遺者(じゅいしゃ)

被相続人が「遺言書」を残していた場合、法定相続人以外の人(友人・知人、お世話になった人や団体など)に遺産を贈ることができます(遺贈)。

受遺者について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

②特別寄与料を請求できる親族

2019年の法改正により、相続人ではない親族(例:長男の嫁など)が無償で介護や看病に尽くした場合、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

③生命保険の受取人

生命保険金は、厳密には「相続財産」ではなく、受取人固有の財産として扱われます。そのため、受取人に指定されていれば、相続人以外でも受け取ることが可能です。

生命保険の受取人について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

④特別縁故者(とくべつえんこしゃ)

相続人が一人もいない場合に限り、家庭裁判所に認められれば、生計を共にしていた人や療養看護に努めた人が遺産を受け取れることがあります。

特別縁故者について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

法定相続人の優先順位と相続割合

法律では、「誰がどのくらいの割合で財産を受け継ぐか」というルールが厳格に決まっており、これを「法定相続分」と呼びます。
亡くなった方に配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の親族には優先順位があり、上の順位の人が一人でもいれば、下の順位の人は相続人になれません。このルールを知っておくことは、感情的な対立を避けるための客観的な根拠となります。

第1順位から第3順位までの決まり方

相続の優先順位は、第1順位が子や孫など、第2順位が父母や祖父母など、第3順位が兄弟姉妹や甥姪などと決まっています。配偶者はどの順位の人がいても常に相続人となります。
もし第1順位である子がいれば、第2順位以降の人は一切相続できません。子がいない場合に初めて第2順位の親へ、さらに親も亡くなっている場合には第3順位の兄弟姉妹へ、と順番に権利が移ります。

法定相続人の範囲と相続順位の図

この順番を間違えると、話合いに参加すべき人を漏らしてしまい、あとで手続がやり直しになるなどのリスクがあるため、戸籍謄本などを確認して正確に把握することが大切です。

パターン別の法定相続分

相続する割合は、誰が相続人になるかの組合せによって変わります。

相続人の範囲法定相続分
配偶者と子(直系卑属)配偶者1/2、子1/2
(子が複数いる場合には、複数の子で合計1/2)
配偶者と父母(直系尊属)配偶者2/3、直系尊属1/3
(直系尊属が複数いる場合には、合計1/3)
配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
(兄弟姉妹が複数いる場合には、複数の兄弟姉妹で合計1/4)
配偶者のみ全部
子のみ全部
父母のみ全部
兄弟姉妹のみ全部

被相続人が900万円を遺して死亡した場合で、相続人のパターン別に相続割合を見てみます。

【配偶者と子ども1人が相続人の場合】

  • 配偶者:450万円
  • 子:450万円

【配偶者と両親が相続人の場合】

  • 配偶者:600万円
  • 父:150万円
  • 母:150万円

【配偶者と兄弟姉妹2人の場合】

  • 配偶者:675万円
  • 兄弟①:112万5,000円
  • 兄弟②:112万5,000円

【配偶者のみ】

900万円

相続順位と法定相続分について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

被相続人の死後に必要な手続とその期限

被相続人が亡くなったあと行うべき手続は多く、法律で定められた厳しい期限があります。大切な家族を亡くして大変だと思いますが、期限を過ぎてしまうと、税金の減額を受けられなかったり、予期せぬ借金を背負ったりといった不利益を被る可能性がありますので、きちんと把握して進めることが大切です。

期限やることリストポイント・注意点
7日以内・死亡届の提出
・火葬・埋葬許可申請
葬儀社が代行してくれるケースが多いです。
14日以内・年金の受給停止手続
(厚生年金の場合は10日以内)
・世帯主の変更届(役所)
・健康保険の資格喪失届
年金の「もらいすぎ」は後日返金が必要になるので早めの手続が大切です。
速やかに・遺言書の捜索・検認
・戸籍謄本の収集(相続人調査)
・財産・債務の調査
手続の土台作りです。ここが遅れるとあとのスケジュールが厳しくなります。
3ヵ月以内・相続放棄・限定承認の検討借金が多い場合に「引き継がない」と決める期限。
裁判所への申立てが必要です。
4ヵ月以内・故人の所得税の申告(準確定申告)故人に事業所得や不動産所得があった場合に必要です。
10ヵ月以内・遺産分割協議書の作成
・相続税の申告・納税
税金の支払期限です。
分割が決まっていないと、税金の特例(割引)が使えないこともあります。
すみやかに・不動産の名義変更(相続登記)
(3年以内)
・預貯金の払戻し・名義変更
2024年から不動産の名義変更が義務化されました。
放置すると罰則の対象になります。

遺産相続手続を効率よく進めるためのアドバイス

①戸籍謄本の取得は「セット」で行う

銀行、法務局、税務署など、あらゆる場所で戸籍謄本を求められます何度も役所へ行くのは大変なので、予備を含めて多めに取得するか、「法定相続情報証明制度」という便利なセット(一覧図)を法務局で作っておくと便利です。

②「期限の延長」ができる場合もある

財産調査に時間がかかり、相続放棄の期限に間に合わない場合、家庭裁判所に申し立てれば3ヵ月の期限を延ばしてもらえるケースがあります「間に合わない!」とパニックになる前に、早めに専門家へ相談してください。

③話合いがまとまらない時は早めにストップ

親族間で意見が分かれそうな気配を感じたら、感情的になる前に弁護士などの第三者を入れるのが得策です。一度こじれてしまうとあっという間に相続税申告の10ヵ月の期限が来てしまうことになります(ただし、10ヵ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合には、いったん法定相続分どおりに相続したものとして仮の申告と納税を行っておき、遺産分割協議が成立したあとに改めて実際の取り分を反映した申告を行うこともできます)。

相続手続を行うにあたってやるべきこと

相続手続を進めるにあたってのやるべきことリストを下記にまとめましたので、ぜひご参考になさってください。

項目体的な内容・調査方法重要なポイント・注意点
戸籍謄本の収集被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍を揃える。現在の戸籍だけでは不十分。隠れた相続人の有無を法的に証明するために必須。
戸籍の取得方法本籍地の役所窓口、または郵送で請求。広域交付制度(一括取得)も活用可能。遠方の場合は郵送の手間がかかる。自分で行うのが難しい場合は専門家(司法書士等)へ。
プラスの財産調査通帳、キャッシュカード、不動産の権利証、固定資産税の通知書などを探す。不動産が不明な場合は役所で「名寄帳」を取得する。銀行には「残高証明書」を請求。
マイナスの財産調査借用書、督促状、通帳の引き落とし履歴を確認。信用情報機関(JICC/CIC等)へ照会。借金が多い場合は3ヵ月以内に相続放棄の検討が必要。
遺言書の捜索自宅(金庫・仏壇・机)、法務局(保管制度)、公証役場(公正証書遺言検索)を探す。公正証書遺言は全国の公証役場で有無を確認できる。
遺言書の扱い自筆の遺言書を見つけたら、勝手に開封せず家庭裁判所で「検認」を受ける。勝手に開けると過料の対象になる恐れあり。
※公正証書遺言や法務局保管分は検認不要。
銀行口座の凍結銀行が死亡を把握(家族からの連絡等)すると口座が凍結される。公共料金の引落しが止まるため、早めの支払い方法変更が必要。
預金の仮払い「遺産分割前の払戻し制度」を利用し、一定額までなら単独で引出し可能。葬儀費用や生活費が必要な場合に有効。計算式に基づいた上限額がある。

被相続人についてよくある質問

「相続権がない人」とはどのような人を指しますか?

「相続権がない人(法定相続人になれない人)」とは、民法で定められた法定相続人に該当しない人や、相続権を失った人などを指す言葉です。
 
【①法律上の親族関係がない人】
日本の民法では、相続ができる範囲(法定相続人)が厳格に決まっています。以下の人は、どんなに親しくても相続権はありません。
 
・内縁の妻・夫(事実婚)
長年連れ添っていても、婚姻届を出していないパートナーには相続権が認められません。
・離婚した元配偶者
離婚が成立した時点で相続権は消滅します。
・事実上の養子(届け出のない養子)
実の親子のように暮らしていても、普通養子縁組や特別養子縁組の手続をしていない場合は相続権がありません。
・配偶者の連れ子(養子縁組していない場合)
再婚相手の子どもであっても、養子縁組をしていなければ法律上の親子ではないため、相続人にはなれません。
・嫁・婿(子の配偶者)
義理の父母が亡くなった際、その子ども(夫や妻)が相続人となるため、嫁や婿に相続権はありません。
・叔父・叔母・従兄弟(いとこ)
これらは「傍系血族」ですが、法律で定められた相続の範囲(子・親・兄弟姉妹およびその代襲者)には含まれません。
 
【②権利を剥奪・放棄した人】
本来は相続人になる立場であっても、以下のケースでは相続権を失います。
 
・相続放棄をした人
家庭裁判所で手続を行い「最初から相続人ではなかったこと」にした人です。
・相続欠格(そうぞくけっかく)に該当する人
被相続人を殺害(または未遂)したり、遺言書を偽造・破棄したりするなど、悪質な不正行為を行った場合、当然に権利を失います。
・相続廃除(そうぞくはいじょ)された人
被相続人に対して虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合、被相続人が生前に家庭裁判所へ申し立てる(または遺言に書く)ことで、その人の相続権を奪うことができます。

養子や代襲相続人がいるケースでは相続の優先順位は変わりますか?

養子や代襲相続人がいる場合でも、基本的な優先順位の考え方は変わりません。
養子は実子とまったく同じ立場で、第1順位の相続人となります。
また、相続人となるべき子どもがすでに亡くなっている場合、その子ども(被相続人の孫)が代わりに相続します(「代襲相続」)。孫がいれば、その孫が第1順位の権利を引き継ぐため、第2順位の親に権利は移りません。
家族関係が複雑な場合ほど、法律上の立場を正しく整理しておくことが、将来的な不利益を防ぐことにつながります。

法定相続人の相続順位とは?遺産相続の基本と遺言書がある場合の扱い

まとめ

相続手続を滞りなく進めるには、まず「被相続人」の意味を正しく理解し、法律に基づいた相続人の範囲や財産状況を正確に把握することが大切です。
特に相続放棄や納税には厳しい期限があるため、早めの調査が欠かせませんし、客観的なルールを正しく知ることは親族間のトラブルを防ぐことにもつながります。もしお悩みや疑問があるなら、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

アディーレでは、主な相続関係の手続をまとめてお受けするプランをご用意しています。
手続ごとに個別に依頼する手間がかかりませんし、相続関係の手続に慣れた弁護士が代わりに対応するため、手続の漏れを心配する必要もありません。

また、相続手続に関するご相談は何度でも無料で承っています。手続の内容や費用面のことなど、気になることがあればお気軽にお問合せください。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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