遺言・遺産相続の弁護士コラム

【弁護士が解説】「遺言書は作るべきか?」迷っているなら注意!家族の絆を壊す4つのケースと防衛策

「うちの家族は仲が良いから、遺言書なんて必要ない」
もしそうお考えなら、少しだけご注意ください。実は、裁判所での相続トラブルの約8割は「遺産5,000万円以下の家庭」で起きています。遺言書がないばかりに、残されたご家族が予期せぬ負担を抱えてしまい、場合によっては関係が崩れてしまうケースも珍しくありません。
この記事では、弁護士が現場の実状を踏まえ「遺言書を作成しておくべき4つのケース」と、ご家族を守るための対策を解説します。

この記事でわかること
  1. 親族間の争いに発展しやすい4つのケース
  2. ご自身で遺言書を作成するリスク
  3. 遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット

「うちは家族仲が良いし、財産も少ないから大丈夫」これが一番危険です

「遺言書なんて、一部の資産家だけの話でしょう?」 もしそのようにお考えなら、少し立ち止まって客観的な事実を確認する必要があります。実は、「揉めるほどの財産がない」というケースであっても、調停や審判などの法的な紛争に発展するケースは多いというデータが存在します。

最高裁判所が公表している「令和6年司法統計年報(3家事編)」によると、遺産分割事件(認容・調停成立件数)のうち遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約78%(うち1,000万円以下が約36%)を占めています。

特に、主な財産が「実家の不動産と少しの預貯金」といった場合、現金のように均等に分割できないため、遺産分割の話合いが難航しがちです。
明確な分け方が決まっていないばかりに意見が対立し、結果的に長引く調停手続へ突入してご家族に重い負担を強いることになりかねません。
「財産が少ないから大丈夫」という思い込みを手放すことが、トラブルを防ぐ第一歩です。

遺言書がないばかりに起きた「争族」4つのケース

遺言書が存在しない場合、相続人全員で「誰が・何を・どれくらい引き継ぐか」を話し合う「遺産分割協議」を行わなければなりません。
全員の合意がなければ、基本的に相続手続はストップしてしまいます。 ここでは、その協議が難航し、法的な争いや親族間の亀裂へ発展しやすい4つの典型的なケースを解説します。

【ケース1】 配偶者が先に他界:「長男 vs 次男」仲良し兄弟が親の死後に…

両親のどちらかが健在であれば、その親が「ストッパー(仲裁役)」となり、兄弟間の意見を調整できることが多くあります。しかし、両親がともに他界すると、残された子どもたちだけで財産を分けることになります。
それぞれの年齢が上がり、生活環境が変わっていることも多く、「子どもたちの学費が必要」「住宅ローンがある」など、各家庭の事情やそれぞれの配偶者の意見も絡んできます。お互いの主張がぶつかり合い、これまで良好だった関係が遺産分割を機に崩れてしまうケースはあとを絶ちません。

【ケース2】実家(不動産)しかない:分けられない実家を巡る、代償金請求

相続財産の大半が「実家の土地と建物」で、現金や預金が少ないケースは非常に注意が必要です。
不動産は現金のように1円単位で均等に切り分けることができません。
たとえば、同居していた長男が実家を単独で相続する場合、ほかの兄弟姉妹に納得してもらうための代償金(現金)を自腹で支払う「代償分割」という方法をとることが一般的です。
しかし、長男に支払うだけの手元資金がなければ協議は暗礁に乗り上げ、最終的には住み慣れた実家を売却して現金化せざるを得ない事態に陥ることもあります。

【ケース3】再婚で先妻の子がいる:顔も知らない異母兄弟との遺産分割協議

被相続人(亡くなった人)が再婚しており、前妻(夫)との間にも子どもがいる場合、その子どもにも現在の配偶者との間にできた子どもと同じ割合の相続分が法的に認められます。
遺言書がないと、現在の配偶者や子どもは、戸籍を辿って面識のない前妻(夫)の子に連絡を取り、「遺産を分けるための話合いに参加してほしい」などと交渉しなければなりません。
面識がなければそのようなやりとりにはお互いに精神的な負担が極めて大きいと考えられるうえ、特に感情的な対立があればなおさら手続が長期化しやすいといえます。

【ケース4】子どもたちの仲がすでに悪い:親の遺産相続が争いの場に

普段から兄弟間の折り合いが悪かったり、疎遠になっていたりする場合、遺産分割協議が「長年の不満や感情的な対立をぶつける場」に変わってしまう傾向があります。
「兄ばかり親から援助を受けていた(特別受益)」「私だけが長年介護の負担を背負っていた(寄与分)」といった過去の事情が次々と持ち出された場合、当事者同士の話合いによる解決は極めて困難になってしまいます。
遺言書で各人の取得分を明確に指定しておかないかぎり、家庭裁判所での調停や審判へと発展するリスクが高まってしまうかもしれません。

「自分で書く」「ネットのひな形を使う」が引き起こすリスク

「費用を抑えたい」「ネットにひな形があるから自分で書けそう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、自筆証書遺言(自分で書く遺言書)には、民法によって厳格なルールが定められています。

日付の書き間違いや押印の漏れ、訂正方法の誤りがひとつあるだけで、遺言書全体が無効になってしまうケースは珍しくありません。
近年では法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度ができ、形式的なチェックを受けることは可能になりましたが、注意が必要なのは形式を満たしていても「内容」に問題があるケースです。
ひな形どおりに書いた結果、特定の相続人に保障された最低限の取り分(遺留分)を侵害してしまい、死後に「遺留分侵害額請求」という新たな金銭トラブルの火種を生むこともあります。

ご自身の想いを確実に実現し、ご家族を争いから守るためには、ご家庭ごとの事情に合わせた法的な精査が重要です。

遺言書の作成にはタイムリミットがあるかも

「まだ元気だから」「もう少し年をとってから考えよう」と、遺言書の作成を先延ばしにされる方は少なくありません。しかし、遺言書には法的に有効となるための「見えないタイムリミット」が存在することをご存知でしょうか。

遺言書は法的な効力を持つ重要な文書であるため、作成時に「遺言能力(有効な遺言書を作成できる能力)」が備わっていることが必須条件となります。
もし、将来的に認知症になったり、急なご病気で意思疎通が難しくなったりした場合、その後に作成された遺言書は無効と判断される可能性が高くなります。

つまり、いざ必要性に迫られてからでは、ご自身の希望を反映した遺言書を残すことはできないのです。大切なご家族を将来の紛争から守るためには、心身ともに健康で、ご自身の意思を明確に伝えられる「今」こそが、遺言書作成の最適なタイミングといえます。

遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット

遺言書は、ご自身の思いを形にするだけでなく、法的な効力を持たせて初めて意味を成す重要な文書です。
法律の専門家である弁護士に遺言書案の作成をご依頼いただくことには、残されたご家族の負担を大幅に減らし、将来の不安を解消できる3つの大きなメリットがあります。

将来のトラブルを未然に防ぐ遺言書を作成できる

弁護士の日常業務の多くは、すでに発生してしまった法的なトラブル(紛争)の解決です。
遺産分割調停や裁判の現場においても、「遺言書のどの表現が曖昧だったために、親族間での解釈が割れたのか」「どのような財産の分け方が不公平感を生み、争いの原因になったのか」という実例を数多く経験しているでしょう。
その経験を活かし、将来を逆算してみた結果が、「弁護士による遺言書案の作成」なの
です。
弁護士にご依頼いただければ、将来起こりうる相続人間の意見の対立や法的リスクを事前に予測し、それらを防ぐための明確で隙のない文面を作成することで、真の意味で「争いを予防する遺言書」の実現を目指します。

「遺言執行」まで任せられる

遺言書は「書いて終わり」ではありません。あなたが亡くなり、いざ相続が発生した際、預金口座の凍結解除や解約、証券口座の移管など、残されたご家族には想像以上に煩雑な事務手続が重くのしかかります。
弁護士に遺言書案の作成を依頼する際、あわせて弁護士を「遺言執行者(遺言の内容を具体的に実現する法的な責任者)」に指定しておくことが可能です。
これにより、ご家族が平日の日中に何度も銀行や役所に足を運ぶ負担をなくせるだけでなく、相続人同士が直接やり取りする機会を最小限に抑えられます。
「財産」だけでなく、手続の負担がない「安心」も残せるのは、大きなメリットであるといえるでしょう。

「遺留分」などの複雑な法的リスクを適切にコントロールできる

「長年介護してくれた長女に多めに財産を残したい」「事業を継ぐ長男に不動産を集中させたい」といったご希望を実現する際、注意しなければならないのが「遺留分」という法律上のルールです。
遺留分とは、簡単にいえば兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている遺産の最低限の取り分のことです。
この遺留分を考慮せずに遺言書を作成すると、ご自身の死後に「遺留分侵害額請求」という新たな金銭トラブルに発展しやすくなります。
弁護士であれば、ご自身の想いを最大限に反映しつつも、この遺留分に配慮した適切な財産配分の設計が可能です。
また、どうしても配分に差を設ける場合には、その理由を「付言事項」として説得力のある形で記載するなど、遺言書の内容を工夫することもできます。 とはいえ、「付言事項」に法的効力はありません。しかし、そのような遺言書を残したご本人の気持ちが明らかになることで、取り分を減らされた相続人の不満が和らぎ、相続人同士での争いを回避しやすくなるといった効果はあると考えられています。

【まとめ】ご家族の絆を守るための第一歩を踏み出しませんか

遺言書は、決して一部の資産家のためだけのものではありません。「残された家族が、自分の死後に揉めることなく、これまで通り仲良く暮らしてほしい」という想いを目に見える形にするための、大切な「最後のお守り」です。

「自分の家は遺言書を作るべきか分からない」「何から手をつければいいか迷っている」という状態でも構いません。まずは現在の状況や漠然とした不安をお聞かせいただくだけで、法的な視点から状況を整理できることがあります。

アディーレ法律事務所では、相続手続だけでなく、遺言書作成といった生前の相続対策についてもご相談をお受けしております。 ご家族の未来を守れるのは、ご自身の意思をしっかり伝えられる「今」かもしれません。ご家族に負担を残さないために、まずは無料相談で、今のお悩みを聞かせていただけませんか。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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