遺言・遺産相続の弁護士コラム

相続財産清算人(相続財産管理人)とは?必要なケースや手続の流れを解説

相続手続

相続財産清算人(相続財産管理人)とは、被相続人の財産を相続する人がいない場合に、相続財産を管理・清算する人のことです。
相続人がいない場合というのは、被相続人に配偶者や子ども、両親などがいない、もしくは相続人にあたる人が亡くなったり、相続放棄をしたりして、相続人がいなくなったケースが該当します。

この記事では、相続財産清算人が具体的にどんな場合に必要になるのか、誰がどうやってなるのか、相続財産清算人が決まったらどんな手続が行われるのかなど、詳しく説明していきます。

この記事でわかること
  1. 相続財産清算人と相続人財産管理人の違い
  2. 相続財産清算人の選任が必要になるケース
  3. 相続財産清算人の選任が必要になるケース ・相続財産清算人の選任前後の流れ

相続財産清算人(相続財産管理人)とは

相続財産清算人(相続財産管理人)とは、相続人がいない場合に、財産を管理・清算して、最終的に国庫へ帰属させる人のことです。
相続財産清算人は、たとえば以下のような手続を行います。

  • 相続財産の調査、財産目録の作成
  • 相続財産の各種名義変更
  • 相続財産の売却・処分
  • 債権者、受遺者(※1)への弁済
  • 特別縁故者(※2)への分配
  • ※1 遺言によって財産を受け取る人のこと
  • ※2 法定相続人以外で、被相続人と特別な関係にあった者。たとえば内縁の妻など。ただし、該当するには要件を満たす必要がある

ただし、財産の売却や処分などは、相続財産清算人の一存では行えず、家庭裁判所の許可を得たうえで行う必要があります。

相続財産清算人になる人

相続財産清算人には、被相続人が居住していた地域の弁護士や司法書士がなることが多いです。

というのも、相続財産清算人になった人は、被相続人との関係や利害関係の有無、財産状況などを踏まえて、さまざまな法的手続を行う必要があります。
相続財産清算人は裁判所によって選ばれるのですが、上記のような手続をスムーズに進めるためには、豊富な法的知識や経験を持つ弁護士などの専門家がふさわしいと判断されることが多いようです。

相続財産清算人と相続財産管理人の違い

相続財産清算人と相続財産管理人の違いは、相続財産の清算を行うかどうかという点にあります。
相続財産清算人には、相続財産の管理だけでなく、財産の売却や債権者への返済、国庫帰属の手続などを行う役割があります。
一方で、相続財産管理人は相続財産の管理のみを行います。たとえば、相続財産に含まれる建物の修繕や保存などが該当します。

なお、「相続財産清算人」という名称は、前は「相続財産管理人」と呼ばれていました。
現在の相続財産管理人は、2023年4月1日施行の改正民法によって新設された制度です。
2つの違いを以下で簡単にまとめていますので、名称が混在しないようにご注意ください。

相続人がいない場合の
相続財産の管理・清算
相続財産の管理のみ
民法改正前相続財産管理人なし
民法改正後相続財産清算人相続財産管理人

相続財産清算人の選任が必要になるケース

相続財産清算人が必要となるのは、何らかの事情によって相続人がいなくなり、なおかつ被相続人の財産を相続もしくは処分したいという目的がある場合です。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 債権者が被相続人に貸していたお金を回収したいとき
  • 特別縁故者にあたる人が被相続人の財産の分与を受けたいとき
  • 相続放棄した人が相続財産の管理義務を免れたいとき
  • 所有者のわからない空き家を市区町村が処分するとき

相続人が不在の場合、被相続人の財産は、まず債権者や特定受遺者、特別縁故者といった「利害関係人」に行き渡ることになります。しかし、利害関係人は、自分の都合で勝手に財産を取得することはできません。
相続財産清算人が正式な手続を行うことで、利害関係人ははじめて財産を取得できるようになるのです。

相続財産清算人の選任を申し立てる人

相続財産清算人の選任を申し立てることができるのは、利害関係者もしくは検察官です。
特に利害関係者は、被相続人と以下のような関係にあった人になります。

  • 債権者
  • 特別縁故者
  • 後見人
  • 財産を管理していた人
  • 不動産を共有していた人

それ以外にも、被相続人が管理していた土地に不法投棄がされたり、建物が老朽化したりして、周辺に悪影響を与える場合には、地方自治体が相続財産清算人の選任を申し立てるケースもあります。

相続財産清算人が選任される条件

相続人財産清算人は、以下の条件を満たしていなければ、そもそも選任することができません。

  • 相続が開始していること
  • 相続財産が存在すること
  • 相続人の存否が不明であること

たとえば、相続開始時には相続人が見つからずに、相続財産清算人が選任されたとします。しかし、あとから相続人の存在が明らかになった場合は、相続財産清算人に代わって、その相続人が各種手続を行うことになります。

なお、相続人に該当する人はいるものの、行方不明で所在がわからない場合は、「相続財産清算人」ではなく、「不在者財産管理人」を選任して相続手続を行います。

相続財産清算人の選任を誰も申し立てなかった場合

相続財産清算人は、必ずしも選任する必要はありません。
たとえ先ほどの条件を満たしていても、利害関係人にあたる人が選任の必要性を感じない場合は、申立てをしなくても特に問題はないのです。
あとでご説明するように、相続財産清算人の選任には多額の予納金が必要なこともあり、誰も申立てをしないままになることも珍しくありません。

ですので、たとえば被相続人の家が空き家となり、周辺に悪影響を及ぼす場合は、先ほどご説明したように地方自治体などが相続財産清算人を申し立てて、対処することになります。

相続財産清算人が選任されるまでの流れ

相続財産清算人を選任する場合は、以下の流れで行います。

  1. 必要書類を準備する
  2. 裁判所へ申立てを行う
  3. 裁判所が審判を行う
  4. 相続財産清算人が選任される

基本的に、必要書類をきちんと揃えて申立てをすれば、相続財産清算人は選任されます。
ただし、申立人が利害関係人に該当しない場合や、相続人がいることが明らかな場合などは、先ほどご説明した選任条件に該当しないため、申立ては却下されてしまいます。

選任に必要な費用

相続財産清算人の選任に必要な費用は、いくつかあります。
具体的には、以下の費用が必要です。

  • 収入印紙(800円分)
  • 連絡用の郵便切手
  • 官報公告料(5,075円)
  • 予納金

予納金とは、相続財産清算人が業務を行うための経費や報酬として、申立人が事前に納めるお金のことです。
予納金は必ず納める必要があるわけではなく、たとえば、相続財産の大半が不動産だったために、現金が少ない場合や、相続財産自体が少ない場合に裁判所から支払いを求められます。

金額は、数十万から100万円前後になることが一般的です。ただし、相続財産の内容や管理状況によっては、相続財産清算人の業務量や範囲も変わるため、それに伴って金額も変動します。

選任に必要な書類

相続財産清算人の選任には、たとえば以下のような書類が必要となります。

  • 申立書(家事審判申立書、800円分の収入印紙を貼付)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本も含む)
  • 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本 など

必要書類について詳しく知りたい場合は、裁判所のWebサイトをご覧いただくか、弁護士などの専門家に相談ください。

相続財産清算人が選任されたあとの流れ

相続財産清算人が選任されたあとは、以下のような流れで相続財産を処分・清算します。

相続財産清算人が選任されたあとの流れ

相続財産清算人の選任および相続人探索の公告

相続財産清算人が選任されると、裁判所は官報(国が発行する広報誌のようなもの)に選任の事実を掲載します。
これを「公告」といって、ここでは、相続財産清算人が選任されたことを公に示すこと、そして本当に相続人がいないのか確かめることを目的としています。

この公告は6ヵ月間を行われ、期間内に相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定し、相続財産清算人は財産の管理・清算を開始します。
仮に相続人が現れた場合には、相続財産は相続人に与えられ、相続財産清算人の職務は終了となります。

相続債権者の公告および債権者・受遺者への弁済

選任および相続人探索の公告と並行し、債権者や受遺者に対して、請求の申し出をするように2ヵ月間の公告を行います。
債権者・受遺者は、この期間内に申し出をしなければ相続財産を受け取る権利を失うため、注意しなければなりません。
ただし、相続債権者・受遺者の存在がわかっている場合には、相続財産清算人はこの公告とは別に個別に請求を申し出るよう促します。

公告期間の終了後、相続財産清算人は申し出に応じて債権者や受遺者へ支払いを行います。支払いの順番は、債権者、受遺者の順です。
支払いが難しい場合は、不動産や車などを売却して資金が捻出されることになります。

相続財産をすべて使い切って残余財産がなくなった場合、手続は終了します。

特別縁故者への財産分与の申立てと分配

債権者・受遺者への支払いを終えて、まだ残った財産があれば、特別縁故者へ分配されることになります。
ただし、分配を希望する特別縁故者は、選任・相続人の捜索公告の期間の終了後、3ヵ月以内に裁判所に対して申し立てる必要があります。
その後、裁判所の審判によって申立てが認められた場合、相続財産清算人が特別縁故者に財産を分配します。

国庫への帰属

特別縁故者への分配を行ったあとに、まだ財産が残っている場合、相続財産清算人は財産の内容に応じて国庫に帰属させるための手続をします。
そして、管理すべき相続財産がなくなった時点で、相続財産清算人の職務は終了です。

なお、不動産の共有持分などある場合は、国庫ではなく、ほかの共有者に帰属します。

相続財産清算人のことなら専門家に相談を

相続財産清算人は、ご説明してきたように被相続人の財産を正しく分配させる大切な役割を持っています。
特に利害関係人にあたる人からすれば、被相続人の財産を受け取るためには、相続財産清算人の存在が必要不可欠です。

しかし、相続財産清算人の選任には、裁判所への申立てが必要となるため、一般の人からすれば難しい手続となるかもしれません。また相続財産清算人を申し立てるべきなのか、判断がつかない場合もあるでしょう。
相続財産清算人のことでお困りであれば、まずは弁護士などの専門家にご相談ください。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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