借金は相続放棄できる?手続の流れや注意すべきポイントを解説
相続が発生した際、亡くなった方に多額の借金があったと知り、困惑する方も多いのではないでしょうか?
「この借金、私が返さないといけないの…?」 そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。
ですが安心してください。「相続放棄」という制度を利用すれば、相続によって借金などのマイナスの財産を引き継がずに済みます。
本コラムでは、相続放棄の基本的な知識や手続の流れ、注意すべきポイント、借金があると知らなかった場合の対処法について詳しく解説します。
相続の際に借金が発覚して困っている方は、安心して相続手続きを進めるためにもぜひ参考にしてみてください。
- この記事でわかること
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- 借金は相続放棄できる
- 借金の相続放棄をする際に注意すべきポイント
- 亡くなった方に借金があると知らなかったときの対処法
- 目次
相続放棄をすれば借金を引き継がずに済む!
相続放棄は、最初から相続人ではなかったとして扱われる制度です。
そのため、亡くなった方に借金があっても、相続放棄をすれば借金を引き継がずに済みます。
相続放棄を選択することで、複雑な相続手続きを避けることができ、時間と労力の節約にもつながります。面倒な遺産分割協議をする必要もなくなり、相続人同士の揉めごとに巻き込まれることもなくなるでしょう。
一方で、相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなるため注意が必要です。
また、相続放棄は「相続発生を知った日から3ヵ月以内」に行う必要があるため、迅速な対応が求められます。
相続放棄したら、被相続人の借金は誰が支払う?
相続放棄をしても、亡くなった方の借金が消えるわけではありません。では、相続放棄をすると誰が借金を支払うことになるのか、ケース別に見ていきましょう。
相続人のうちの誰かが相続放棄したケース
相続人のうち一部の人が相続放棄をした場合、放棄した分の財産は、ほかの相続人が法定相続分に基づいて相続することになります。つまり、借金がある場合、ほかの相続人が分担して返済しなければならなくなるということです。
たとえば、亡くなった父親の遺産を3人の子だけで相続する際、子のうち1人が相続放棄したケースでは、残りの2人で遺産を分割します。
このとき、1,000万円の借金があった場合には、相続放棄をしていない2人が500万円ずつ借金の返済義務を負います。
さらに、残りの2人も相続放棄をすると、借金の支払義務は次の順位の法定相続人(亡くなった父親の父母や祖父母などの直系尊属)に移行します。
相続人の全員が相続放棄したケース
相続人の全員が相続放棄をした場合、亡くなった方には相続人がいないものとみなされます。つまり、相続人は誰も亡くなった方の借金を引き継がなくてよいということです。
ただし、相続人全員が相続放棄をした場合でも借金そのものがなくなるわけではありません。そのため、相続放棄をした相続人などの申立てがある場合には、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任され、債権者への配当手続などが行われます。
相続財産清算人は、中立的な立場で残された財産を整理する役割を担っており、弁護士や司法書士などの専門家から選ばれるのが一般的です。亡くなった方の財産を現金化し、借金などの負債を支払います。
借金の相続放棄をする際に注意すべきポイント
亡くなった方に借金がある場合には、相続人間のトラブルを防ぎ、相続放棄の手続を失敗しないためにも、以下のポイントに注意しましょう。
- ほかの相続人に相続放棄することを連絡する
- 被相続人の借金の保証人になっている場合、その義務は放棄できない
- 相続放棄の手続中の請求や取立てには応じない
- 相続財産には手を付けない
- 相続発生を知ってから3ヵ月以内に手続する
詳しく解説していきます。
ほかの相続人に相続放棄することを連絡する
相続放棄をする際には、ほかの相続人に相続放棄することを伝えましょう。これを怠ると、ほかの相続人に不意に借金が降りかかることになり、トラブルになってしまう可能性があります。
また、相続放棄することを伝える際には、相続放棄の理由や手続を説明し、ほかの相続人の理解を得るよう努めましょう。
被相続人の借金の保証人になっている場合、その義務は放棄できない
あなたが亡くなった方の借金の保証人である場合、相続放棄しても、保証人としての義務は放棄できません。そのため、亡くなった方に借金がある場合には、保証人であるあなたが返済を肩代わりする必要があります。
これは、相続放棄があくまで「亡くなった方の立場を引き継がない」という手続であるためです。あなた個人が負っている義務からは逃れることはできないため、注意しましょう。
相続放棄の手続中の請求や取立てには応じない
相続放棄の手続が進行中であれば、債権者からの請求や取立てには応じる必要はありません。
請求や取立てに応じてしまうと、相続を承認したと見なされる場合があるため注意が必要です。
相続放棄の手続を進めている旨を債権者に連絡し、正式な手続が完了するまで待ってもらうよう依頼するのがよいでしょう。
相続財産には手を付けない
相続放棄を検討している場合、相続財産には手を付けないようにしましょう。これは、相続財産を使用したり処分したりすると、相続を受け入れたとみなされる可能性があるためです。
たとえば、以下のような行為はしてはいけません。
- 預金口座から現金を引き出す
- 車を売却する
- 不動産を貸し出す など
相続発生を知ってから3ヵ月以内に手続する
相続放棄は相続発生を知った日から3ヵ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、相続放棄は認められません。期限内に必要な書類を揃え、家庭裁判所に提出しましょう。
もし、3ヵ月以内に手続が完了しない場合、相続放棄が認められず、借金を引き継ぐことになってしまうおそれがあります。このため、相続が発生したらすぐに弁護士などに相談し、手続を迅速に進めることが重要です。
相続放棄の手続の流れ
相続放棄の手続は、以下のような流れで行います。
- 被相続人の財産を調査する
- 必要書類の収集
- 相続放棄申述書の作成と家庭裁判所で相続放棄の申述をする
- 相続放棄申述 受理通知書の受理
①被相続人の財産を調査する
まず、亡くなった方の財産を調査し、借金を含めた全体像を把握する必要があります。
プラスの財産とマイナスの財産(借金)に分けて財産目録を作成し、漏れなく詳細に確認しましょう。
なおこのとき、亡くなった方が隠している財産などがないかも調査する必要があります。必要ならば、専門家の力を借りて調査を進めましょう。
②必要書類の収集
相続放棄の手続には、以下の書類が必要 です。
- 相続放棄申述書
- 亡くなった方の戸籍謄本
- 相続放棄をする人の戸籍謄本
- 亡くなった方の住民票除票 など
戸籍謄本などの書類は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する役所などで取得できます。
なお、亡くなった方と相続人の関係によっても必要書類が異なるため、詳しくは申立てを行う家庭裁判所のホームページなどをご確認ください。
③相続放棄申述書の作成と家庭裁判所で相続放棄の申述をする
必要書類を揃えたら、相続放棄申述書を作成します。この際、相続放棄の理由を明確に記載しなければなりません。たとえば、「借金が多額であるため相続放棄を希望する」といった理由を記載しましょう。
相続放棄申述書の作成には、法的な知識が必要な場合もあるため、弁護士などに相談しアドバイスを受けるのがおすすめです。
相続放棄申述書は、家庭裁判所に必要書類とともに提出します。その後、家庭裁判所において審理が行われます。
なお、家庭裁判所が相続放棄を認めるにあたって、相続放棄の申述が確かにあなたの真意に基づいてなされたものかなどを確認する書面(これを「照会書」といいます)をあなたに送付してくる場合があります。
この場合には、照会書への回答も行いましょう。
④相続放棄申述受理通知書の受理
家庭裁判所が相続放棄を認めると、相続放棄申述受理通知書が届きます。これで相続放棄の手続は完了です。
相続放棄申述受理通知書は大切な書類であり、将来証明が必要な場合もあるため、しっかりと保管しておきましょう。
なお、受理通知書が届くまでの間に債権者から連絡がきた際は、冷静に対応し、手続が進行中であることを伝えましょう。
被相続人に借金があると知らなかったときの対処法
相続手続をしたあとで、亡くなった方に借金があったことが判明することもあり得ます。しかし、相続財産を処分していなければ、相続放棄ができる可能性があります。
相続放棄の手続は、原則として相続が発生したことを知ってから3ヵ月以内に行わなければなりません。ただし、借金がないと信じるについて相当な理由があったケースなど、特別な事情がある場合には、相続放棄の期限のスタート地点(起算点)を後ろ倒し(繰り下げ)にでき、時間が経過してからの相続放棄を 裁判所に認めてもらえるかもしれません。
なお、すでに相続財産を処分してしまった場合などは、相続放棄ができないおそれもあります。そのため、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
状況によっては、相続放棄ではなく債務整理などの方法で、借金問題を解決できる可能性もあります。
相続放棄をお考えならアディーレへご相談を
相続放棄をすれば、亡くなった方の借金を支払わずに済みます。
ただし、相続発生を知った日から3ヵ月以内に手続を行うこと、そして借金を含めた相続財産には手を付けず慎重に対応することが重要です。
相続放棄は、手続が複雑で、専門知識が必要となる場合もあるため、専門家に相談しましょう。
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- この記事の監修者
-
- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。