遺言・遺産相続の弁護士コラム

実家を相続する方法や注意点は?発生する税金についても解説

相続手続

実家を相続する場合は、単に必要な手続や方法を知っておくだけでなく、その家に住まない場合は活用方法や処分方法についても検討する必要があります。

そこでこのページでは、実家を相続することなった方に向けて、相続する際にやってはいけないことや、相続する前に考えておくべきことなどを詳しくご紹介します。また、実家の相続に伴って発生する税金についても解説しますので、ぜひ参考になさってください。

この記事でわかること
  1. 実家を相続する前に考えるべきこと
  2. 実家を相続するならやってはいけないこと
  3. 実家を相続する流れ

実家を相続する前に考えるべきこと

実家を相続するのであれば、「相続した実家をどうしたいのか」を先に決めておくべきです。
相続する前から方針を決めておくことで、準備や手続をスムーズに行うことができます。
実家を相続することになった場合、具体的には以下のような選択肢が考えられます。

  • 自分で住む
  • 貸し出す
  • 家だけ壊して土地活用をする
  • 手放す

それぞれ詳しく見ていきましょう。

自分で住む場合

ご自身が賃貸物件に住んでいて、将来住宅の購入予定がある場合は、相続した実家に自分で住むのは有力な選択肢の1つです。
家賃や住宅購入費用を節約できるというメリットがありますし、空き家になることも防げます。

ただし、相続した実家が老朽化していると修繕の手間と費用がかかります。また家賃がかからない代わりに、固定資産税の支払いが発生することを考慮しなければなりません。

貸し出す場合

実家を賃貸に出して、家賃収入を得る選択肢もあります。実家の立地や状態がよければ、借り手を見つけやすいはずです。詳しくは不動産業者に確認されるとよいでしょう。

なお、借り手が見つかったあとでは、「やっぱり売りたくなった」、「自分で住みたい」といったことは難しくなるためご注意ください。

家だけ壊して土地活用をする場合

実家の状態が悪い場合は、取り壊して更地にし、土地だけ活用するとよいでしょう。
売却してもいいですし、個人や企業に貸し出して継続的な収入を得ることも可能です。

注意点としては、立地などの条件次第で買い手や借り手が見つからず、維持費だけがかかるおそれがあることです。この点は事前によく調べておくとよいでしょう。
また、更地にした場合は実家が建っていたときと比べて、固定資産税の金額が何倍にも膨れ上がるおそれもありますので、のちに詳しくご説明いたします。

手放す場合

実家を相続したあと、以下のような方法で手放すことも可能です。

  • 売却する
  • 自治体に寄付する
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する

まず売却や寄付については、必ずしもできるわけではありません。実家の状態や立地次第では買い手が見つからなかったり、自治体から寄付を断られたりする可能性もあります。

売却を検討する場合は「空き家・空き地バンク」に登録しておくのもよいでしょう。空き家・空き地バンクとは、空き家や空き地を利用したい方に向けて、自治体が情報発信を行っているサービスです。不動産業者と違って仲介手数料がかからないため、買い手がより見つかりやすくなります。

相続土地国庫帰属制度」とは、相続などによって取得した土地を国に引き取ってもらえる制度のことです。ただし制度の利用には条件があり、前提として建物部分は取り壊さなければいけません。

なお、そもそも実家を相続したくない方は、「相続放棄」をすることになります。実家以外の財産も手放すことにはなりますが、管理や売却などの手間からは解放されます。

実家を相続する際にかかる税金

実家を相続すると、まず「相続税」が発生します。そして、実家の名義を被相続人(亡くなった人)からご自身に変更する手続(相続登記)をするうえで、「登録免許税」もかかります。

基本的には上記の2種類ですが、売却して利益が出たら「所得税」が、保有する場合には「固定資産税」などがかかります。
また、遺言書で指定された相続人以外の方が実家を取得する場合は、さらに「不動産取得税」を支払う必要もあります。

実家をはじめとする不動産の相続時にかかる税金について、さらに詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。

実家を相続するならやってはいけないこと

実家を相続するのであれば、以下のような対応はすべきではありません。

  • 相続した実家を放置する 
  • 無計画に実家を解体して更地にする
  • 相続直後に実家を売却する
  • 相続後、3年以上経過してから実家を売却する  
  • 安易に兄弟間で共有名義にする

それぞれ見ていきましょう。

相続した実家を放置する 

相続した実家を放置して管理を怠ると、いわゆる“空き家”となります。
空き屋は、衛生面や防犯面などから近隣に悪影響をおよぼすおそれがあるため、現在では「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって取締まりの対象となっています。

この特別措置法は、持ち主に対してまず空き屋の管理・処分を命じます。しかし、その命令に従わない場合には罰則があり、固定資産税が最大で約6倍(※)になったり、50万円以下の罰金(過料)を科せられたりします。
さらに、自治体が空き屋を強制的に処分することになった場合は、その費用を全額負担しなければなりません。

  • 正確には、「住宅用地特例」という減税制度の対象から外されることで、固定資産税が実質約6倍になる

無計画に実家を解体して更地にする

実家が残っている状態だと、土地は住宅用地として扱われ、固定資産税の減税を受けることができます。条件次第では、最大6分の1の金額で済むため、実家の評価額次第ではかなり大きな減税といえるでしょう。

しかし、実家を取り壊すことで、減税制度の対象ではなくなるため、固定資産税の金額が跳ね上がるおそれがあります。
すぐに借り手や買い手が見つかるようなら心配はいりませんが、無計画にただ取り壊しただけだと、高額になった固定資産税を負担し続けることになるのです。

そのうえ、実家が建てられた時期が古すぎる場合は、建築基準法の関係でその土地には再建築ができない可能性もあり、さらに引き取り手が見つかりづらくなるおそれもあります。

相続直後に実家を売却する

実家を相続直後に売却すると、「小規模宅地等の特例」を適用できない可能性があります。
小規模宅地等の特例とは、条件を満たす土地について、相続税の評価額を最大80%減額できる制度のことです。

具体的には、相続する土地を相続税の申告期限前(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内)に売却していると、小規模宅地等の特例が利用できずに、相続税の負担が重くなる可能性があります。
売却する際は十分検討したうえで行うようにしましょう。

小規模宅地等の特例については、以下のページで詳しく解説していますので併せてご覧ください。

相続後、3年以上経過してから実家を売却する 

相続した実家を売却する場合、相続から3年以上が経過していると「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」が、3年10ヵ月以上が経過していると「相続税の取得費加算の特例」が利用できなくなります(※)。

簡単にご説明すると、上記の特例を利用すると、売却時に発生する所得税を大きく軽減することができるのです。
もちろん、満たすべき条件は「相続からおよそ3年以内」にもありますが、金額次第では大きな節税効果が期待できるため、ぜひ利用したい制度だといえます。
先ほどご説明した「小規模宅地等の特例」との兼ね合いも考慮すると、売却時期には十分注意したほうがよいでしょう。

  • 正確には、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」の場合は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)から3年が経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があります。また、「相続税の取得費加算の特例」は、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)の翌日から3年が経過するまでに譲渡していることが条件です。

安易に兄弟姉妹の共有名義にする

実家を兄弟姉妹の共有名義で相続することには、以下のようなデメリットがあります。

  • 売却や賃貸などが自由にできない
  • 維持や管理の手間が原因でトラブルになる
  • 将来の相続手続が複雑になる

共有名義の不動産は、自分の意思だけでは売却や賃貸に出すことができないため非常に不便です。また固定資産税や修繕費は誰が支払うのか、定期的なメンテナンスは誰がするのかなどについて、公平に取り決めておかなければトラブルに発展するリスクもあります。

さらに共有名義の権利は、将来的には兄弟姉妹の子や孫がそれぞれ相続するので、権利者が増えていく可能性が高いです。権利者が多くなれば、それぞれの利害が絡み合いトラブルになりやすくなるでしょう。

実家を相続するまでの流れ

実家を相続する場合は、以下のような流れで手続を行っていくことになります。

  1. 遺言書の有無の確認
  2. 相続人・相続財産の調査
  3. 遺産分割
  4. 相続登記・相続税申告

それぞれ見ていきましょう。

①遺言書の有無の確認

実家の相続が発生したら、まずは遺言書が残されていないか確認しましょう。
遺言書がある場合は、基本的にその内容どおり相続することになるため、実家についての記載があれば従う必要があるのです。

遺言書は、被相続人が実家に保管している場合をはじめ、法務局(遺言書保管所)や公証役場に保存されている場合もあるため、すべて確認するようにしましょう。

②相続人・相続財産の調査

実家以外にも相続する財産がどれだけあるか、調査する必要もあります。併せて、相続人の範囲も調べておくとよいでしょう。
これらの調査を怠ると、あとから新しい相続財産や相続人が見つかったときに手続がすべてやり直しになるおそれがあります。
実際、調査をしたら思いもしなかった財産や相続人が見つかるケースも少なくないため、必ず行っておくべきです。

③遺産分割

遺言書が残されておらず、相続人が複数いる場合には「遺産分割協議」を行います。
遺産分割協議では、誰がどれだけ財産を相続するかについて、話合いで決めることになりますが、実家の相続では注意点があります。
それは、実家以外にめぼしい相続財産がなかった場合です。不動産は、預貯金などに比べて単純に分割することができないため、相続人同士でトラブルに発展することが少なくありません。

たとえば、自分が実家を相続した場合、ほかの相続人から代償金の支払いを求められ、その金額でもめることがあり得ます。ほかにも、実家の状態や立地が悪ければ、誰も相続したがらず、押し付け合いになることもあるでしょう。
遺産分割協議が難航しそうなときは、あらかじめ弁護士に相談することも検討すべきです。

④相続登記・相続税申告

実家を相続することが決定したら、まずは「相続登記」を行います。相続登記とは、実家の名義を被相続人から自分に変更する手続のことで、実家を相続した日(実家を取得したことを知った日)、もしくは遺産分割協議が成立した日から3年以内に行わなければいけません。
また、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内には、相続税の申告も必要となります。

どちらの手続も、怠った場合には罰則が科せられるため必ず期限内に対応しましょう。
ここまで完了すれば、実家の相続手続は終わりです。

実家の相続でお困りならアディーレへ

ご説明してきたように、実家を相続する際には、事前にさまざまな内容を検討しておかなければいけません。
しかし、法律や税金の細かい内容が関係してくると、一般の方では判断に迷う場面が出てくるはずです。かといって、よくわからないまま手続をすると損をしてしまう可能性があります。

そのため、少しでも不安なことがあれば弁護士などの専門家にご相談ください。
アディーレなら遺言・遺産相続に関するご相談は何度でも無料です。相続に詳しい弁護士が、相談者の方にとって最適な手続をご案内し、面倒な手続はすべて代わりに行います。ぜひお気軽にお問合せください。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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