遺言・遺産相続の弁護士コラム

土地を相続放棄することはできる!放棄する流れや注意点をわかりやすく解説

相続放棄・限定承認

相続することになった土地が必要ない場合は、相続放棄によって手放すことができます。
しかし、土地の相続放棄ではいくつか注意しなければならないことがあり、「相続放棄さえすれば全部済むだろう」と安易に考えるべきではありません。

このページでは、土地を相続放棄する際の注意点や流れ、相続人全員が相続放棄した場合の対処法などを解説しています。
不要な土地を相続する予定があり困っている方は、ぜひ参考になさってください。

この記事でわかること
  1. 土地を相続放棄する際の注意点
  2. 土地を相続放棄するまでの流れ
  3. 土地を相続放棄できなくなるケース

土地を相続放棄することはできる

土地の相続が発生したとき、相続放棄によってその土地を手放すことができます。そして、法律上、初めから相続人ではなかったことになります。

そして相続放棄された土地は、次の「相続順位」の相続人に相続権が移ります。
相続順位とは、遺産を誰が優先して受け取るかについて、法律が定めた順番のことで、以下のように定められています。

配偶者(※配偶者はもっとも優先順位が高く、常に法定相続人になります)
第1順位:子、孫(直系卑属)
第2順位:父母、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹、甥・姪(傍系血族)

法定相続人の範囲と相続順位の図

たとえば、被相続人Aさん名義の土地が残された場合、まずはAさんの子が土地を相続するか検討することになります。そして子が相続放棄を選択すると、Aさんのご両親に引き継がれ、さらにご両親も相続放棄をすれば、次はAさんのご兄弟が…といったイメージです。

ほかの財産まで放棄することになる

土地を相続放棄する場合はデメリットもあり、ほかの相続財産まですべて手放すことになります。
つまり、土地だけを相続放棄することはできないのです。

土地を相続して所有するだけだと、固定資産税の支払いや、定期的な管理が大きな負担になります。売却などができるなら別ですが、そうでない場合は相続放棄することもやむを得ないでしょう。
しかし、ほかの相続財産にそれ以上の価値があれば、相続放棄するほうが損になるケースもあるため、十分に検討しなければなりません。

相続放棄以外で土地を手放す方法もある

不要な土地を相続したくない場合は、相続放棄以外にも以下のような対応策があります。

  • 売却する
  • 自治体に寄付する
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する

とはいえ、相続放棄を考えている時点で、売却という方法は困難な状況かもしれません。もし買い手が見つからずにお困りなら、各自治体が運営する「空き地バンク」の利用も検討しましょう。
売り手と買い手が直接やり取りをできるため、不動産業者と違って仲介手数料がかからず、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
また寄付については、必ずしもできるわけではありません。立地などの条件次第では断られる可能性も十分あります。

相続土地国庫帰属制度」とは、相続などによって取得した土地を国に引き取ってもらえる制度のことです。ただし制度の利用にはいくつか条件がありますので、詳細は法務省のWebサイトをご覧ください。

参考:相続土地国庫帰属制度について

相続人全員が土地を相続放棄したらどうなる?

相続人全員が土地を相続放棄した場合、最終的には国が引き取ることになります。
ただし、国が勝手に手続をしてくれるわけでありません。実際に手続を行うのは「相続財産清算人」です。

相続財産清算人は、相続人がいない場合に、財産を管理・清算して、最終的に国庫へ帰属させる人のことで、被相続人が居住していた地域の弁護士や司法書士から選ばれることが多いです。
この相続財産清算人についても、相続人の誰かが行動を起こさない限り、基本的に選任されることはありません。相続人同士で話し合い、代表者が裁判所に申し立てる必要があります。

相続財産清算人については、以下のページで詳しく解説していますので併せてご覧ください。

相続放棄をしても土地の管理義務が発生することがある

相続放棄をすると、もともと相続人でなかったことになるため、土地の管理義務(民法上は、保存義務という)もなくなります。
しかし、以下の期間中は相続放棄をしていても土地を管理する義務が発生します。

  • 次の相続人が土地を相続して管理を開始するまで
  • 相続人全員が相続放棄した場合、相続財産清算人が選任されるまで

「相続放棄をしたから終わり」と考えるのではなく、誰かが相続する、もしくは国庫に帰属するまでは注意しておいたほうがいいでしょう。

管理義務を負うのは土地を占有している相続人のみ

相続放棄をしたあとに、土地の管理義務を負う可能性があるのは、土地を占有している相続人だけです。

たとえば、被相続人に2人の息子がいたとします。長男は遠方に住んでいて、次男は被相続人と同居していました。このとき、実家とその土地を息子2人とも相続放棄する場合、遠方に住んでいる長男ではなく、実家に住んでいた次男に管理義務が発生するのです。
なお、このケースで息子2人ともが遠方に住んでいた場合には、どちらも相続放棄後に管理義務は負わず、誰も管理義務を負うことはないと考えられます。

土地の管理義務を怠った場合のリスク

土地の管理義務が発生しているにもかかわらず、それを怠った場合は、損害賠償を請求される可能性があります。
たとえば、土地を放置し続けたことで樹木が伸び放題となり、近隣住民や通行人のケガなどに繋がった場合などです。ほかにも、管理不足が原因で土地の価値が下がった場合、その土地を相続することになったほかの相続人から請求を受けるおそれもあるでしょう。

土地を相続放棄する際の流れ

土地を相続放棄する場合は、以下のような流れで行います。

  1. 土地以外の相続財産の調査
  2. 必要書類の収集
  3. 相続放棄申述書の作成と相続放棄の申述
  4. 相続放棄申述受理通知書の受領

土地以外に高額な相続財産がある場合は、相続放棄によって大きく損をする可能性があります。そのため、本当にすべて手放してもよいか検討するために、事前にしっかりと調査しておきましょう。
そのあとは、基本的に裁判所を通したやり取りになります。手続に必要な書類を収集・作成して、裁判所が受理すれば手続は完了です。

相続放棄に必要な書類と費用

相続放棄を裁判所に申し立てる際に必要となる書類や費用は、たとえば以下のとおりです。

必要書類の例

  • 相続放棄の申述書
  • 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
  • 「被相続人が死亡した」旨の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票

費用の例

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:400円程度
  • 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本の取得代:450円
  • 除籍謄本、改製原戸籍謄本の取得代:750円
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票の取得代:300円程度

相続放棄の期限は3ヵ月以内

相続放棄の手続には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時 」から原則3ヵ月以内に行わなければなりません。

相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人の死亡を知り、なおかつ自分が相続人になったことを知った時です 。
たとえば、自分が被相続人の配偶者や子どもであるときなど、相続権があることをあらかじめわかっているような場合は「被相続人の死亡を知った時 」を起算日とします。
一方で、被相続人の死亡時には相続権がなく、前の相続順位の人が相続放棄をして自分に相続権がまわってきた場合は、「自分に相続権があることを認識した時」が起算日になります。

なお、この期限を過ぎてしまった場合も、相続放棄をしなかったのもやむを得ないといえるだけの合理的な理由があるときは、それを裁判所に対して説明できれば、申立 てを受理してもらえる可能性はあります。
ただし、裁判所を納得させられるだけの合理的な理由は限定されていますし、その証拠を揃えるのも非常に困難なため、できるだけ期限内に行うようにしましょう。

土地を相続放棄できなくなるケースもある

土地を相続放棄しようとしても、気づかないうちに相続をしてしまい、相続放棄ができないことがあります。
「気づかないうちに相続する」という状況が想像しづらいかもしれませんが、たとえば以下のようなケースです。

  • 土地以外の財産について、全部または一部を使用・売却した
  • 被相続人が抱えていた借金を返済した

法律では、「単純承認」といって、上記のような行為をした場合に、相続人の意思とは関係なく相続したものとみなす制度があります。
しかし、相続放棄は土地以外の財産も含めてすべての権利を放棄する手続であるため、一度相続してしまった時点で放棄することはできなくなるのです。

土地の相続放棄をお考えならアディーレへ

たとえご自身に土地の相続権があったとしても、実際に相続するかどうかは、相続人の意思が尊重されるため、その土地の価値や管理コストなどを踏まえた判断になると思います。不要な土地を無理に相続するとかえって負担になる場合もあるため、相続放棄をしたほうがよい結果に繋がることも多いでしょう。

しかしご自身の意思に反して、いつの間にか土地の相続放棄ができなくなってしまうケースもあるなど、無事に相続放棄の手続を完了させることは、一般の方にとっては難しい面もあります。

アディーレでは、相続放棄に関するご相談は何度でも無料で承っています。
「土地を手放したいけど、裁判所を通した手続が不安…」という方は、ぜひ一度ご相談ください。相続放棄に詳しい弁護士が、あなたの代わりに手続を行わせていただきます。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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