相続に関わりたくない人は相続放棄を!注意点や放棄以外の方法も解説

何らかの事情で相続に関わりたくない場合は、まず相続放棄を検討すべきです。ただし、相続放棄をする場合はいくつか気をつけるべきことがあります。
仮に相続放棄はしないとしても、「何も対処しない」ということだけは必ず避けなければいけません。
このページでは、相続に関わりたくないときに相続放棄を検討すべき理由や、相続放棄の注意点、それ以外の対処法などについて解説いたします。
- この記事でわかること
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- 相続に関わりたくないときに相続放棄を検討すべき理由
- 相続放棄の概要や、相続放棄をする場合の注意点
- 相続が発生したのに何もしないリスク
- 目次
相続に関わりたくないなら、まず相続放棄を検討する
「相続に一切関わりたくない」とお考えなら、相続放棄という手続をまず検討されるとよいでしょう。
相続放棄とは、プラスの財産(預貯金など)・マイナスの財産(借金など)にかかわらず、一切の財産について相続を拒絶し、相続人の地位を捨てる手続です。
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになるため、ほかの相続人との話合いから解放され、相続手続に関わる必要が基本的になくなります。
相続放棄なら「関わりたくない」という理由で手続できる
相続放棄の手続は、「相続に関わりたくない」という個人的な理由であっても認められます。
裁判所は理由そのものよりも、基本的に以下の点を重視するからです。
- 相続放棄によって、生じる結果やリスクを正しく理解しているか
- 上記を理解したうえで、自らの意思で相続放棄を望んでいるか
たとえば、「ほかの相続人と関わりたくないため」といったような記載をするだけでも十分なのです。
申述書の詳しい記載方法は、以下のページで詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
相続放棄は自分でできる?
相続放棄の手続は、ご自身だけで行うことも可能です。
ただし、一から手続の詳細を調べて、漏れなく対応するのは簡単ではありません。
たとえば、必要書類の1つである戸籍謄本を何通も集めなければならないケースがありますし、裁判所とのやり取りを負担に感じることもあるでしょう。
もし、手続に少しでも不安があったり、手間をかけたくなかったりする場合は、弁護士へ依頼することを検討されるべきです。
相続放棄の流れや費用の目安は?
相続放棄の手続をする流れや、手続にかかる費用については以下のとおりです。
手続の流れ
- 必要書類(戸籍謄本など)を収集する
- 「相続放棄申述書」を作成する
- 裁判所へ書類一式を提出する
- 裁判所が申立内容を確認し、相続放棄が受理される
- 「相続放棄申述受理通知書」が届けば手続完了
手続にかかる費用
- 裁判所に納める手数料: 800円
- 戸籍謄本などの取得費用:数千円程度(相続人の数によって変動)
- 裁判所との連絡用の郵便切手代:数百円~数千円程度
相続放棄の手続の流れや注意点については、以下のページで詳しく解説しています。
相続放棄をするなら注意すべきこと
相続放棄は、「相続に関わりたくない」という場合に有効な手続ですが、以下のような注意点もあります。
- 預貯金などに手を付けてはいけない
- 手続には期限がある
- ほかの相続人に連絡する
場合によっては、相続放棄ができなくなるおそれもあるため、以下で詳しく見ていきましょう。
預貯金などに手を付けてはいけない
相続放棄を検討している場合、亡くなった方の財産には一切手を付けてはいけません。
相続放棄を行う前に、預貯金を引き出したり、不動産を売却したりすると、「相続人であることを認めた」とみなされてしまうからです。
これを「法定単純承認」といって(民法第921条第1号)、相続放棄が認められなくなる可能性が非常に高くなります。
そのほか、故人の預金から借金を返済したり、価値のある品を形見分けとして受け取ったりすることも、単純承認に繋がる可能性があります。くれぐれもご注意ください。
手続には期限がある
相続放棄の手続は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内」に行う必要があります。
具体的には、以下の2点を満たした時点から3ヵ月以内が期限となります。
- 被相続人の死亡を知った
- 自分が相続人であると知った
裁判所に申立てを行うことで、期間を延長してもらえる可能性はあるものの、認めてもらえる保証はありません。必ず期限内に手続を完了させるようにしましょう。
ほかの相続人に連絡する
相続放棄をすることについて、相続順位が同じまたは次の相続人へ、できれば連絡しておくとよいでしょう。
というのも、あなたが相続放棄すると、被相続人に借金があった場合、ほかの相続人にその返済義務が移ったり、返済額が増えたりします。
その場合、あなたに対して不満を抱く人も出てくるでしょうし、なかにはトラブルに発展するケースもあるでしょう。
そういった事態を防ぐためにも、あらかじめ相続放棄する旨を伝えておくことをおすすめします。
相続順位について
なお、相続順位については、配偶者を除く相続人について、以下の順位で法定相続人となります。
第1順位:子
第2順位:親などの直系尊属
第3順位:兄弟姉妹

また、ほかの相続人への連絡方法などについては、以下のページで解説しています。併せてご覧ください。
相続に関わりたくないときに検討するその他の方法
相続に関わりたくないときの対処法として、相続放棄以外にも、相続分の譲渡や放棄といった手段があります。
ただし、相続放棄とは異なる効果やデメリットが存在しますので、以下で詳しく見ていきましょう。
相続分の譲渡
相続分の譲渡とは、相続人としての自分の持分を、ほかの相続人や第三者に譲り渡す手続です。
具体的には、「相続分譲渡証明書」といった書面を作成して、持分の譲渡に関して取決めを行います。
相続分の譲渡を行うメリットは、「遺産分割協議に参加しなくて済む」という点です。
ただし、あくまでも相続分に対する意思表示に過ぎず、相続人としての地位を失うわけではありません。
したがって、もし亡くなった方に借金があった場合、その返済義務は残ってしまう点には注意が必要です。
相続分の放棄
相続分の放棄とは、特定の誰かを指定せずに、自分の持分を手放すことをいいます。
遺産分割協議の場で「私は一切の財産を相続しません」と意思表示し、相続人全員の合意が得られたら、相続分を放棄することができます。
裁判所を通した手続が要らず、一見すると手軽に思えるかもしれません。
しかし、この方法も相続放棄とは異なり、相続人であること自体は変わりません。
借金の返済義務までは放棄できないため、返済を求められたら、法定相続分に従って支払う必要があります。
「相続に関わりたくないから」といって、何もしないとどんなリスクがある?
借金の督促が来るリスク
相続手続を何もしないまま3ヵ月の熟慮期間が過ぎると、単純承認をしたとみなされます。
単純承認の場合、亡くなった方に借金があれば、ご自身の法定相続分に応じて、返済義務を負うことになってしまいます。
たとえば、ある日突然、疎遠だった被相続人の債権者(貸金業者など)からあなた宛てに督促状が届いたとしましょう。
あなたがその段階で初めて、相続人となった事実と、相続された借金の存在をともに知った場合は、その時点から3ヵ月の熟慮期間となりますので、期間内に相続放棄することによって対処することが可能です。
しかし、3ヵ月以上何もしなかった場合は、もはや相続放棄により借金の返済義務を免れることはできなくなります。
ほかの相続人から訴えられるリスク
連絡を無視したり、遺産分割協議への協力を拒んだりしていると、ほかの相続人から「遺産分割調停」を申し立てられる可能性があります。
相続手続のなかには、相続人全員の合意が必要なものもあるため、非協力的な相続人がいると手続が進まないことがあるためです。
遺産分割調停とは、裁判官や調停委員が相続人それぞれの主張を聞き取りながら、遺産分割の話合いを取りまとめる手続のことです。
この遺産分割調停を正当な理由なく欠席した場合、裁判所の判断によって、5万円以下の過料が科される可能性があります。
それでも欠席を繰り返した場合、やがて「遺産分割審判」という手続に移行します。
この審判手続も欠席してしまうと、相手方に有利な内容で審判が下される可能性がありますので、不利益を被る可能性がより高くなるでしょう。
不要な不動産の管理義務などを負うリスク
もし相続財産に不動産が含まれる場合、その不動産は法定相続人全員の共有財産となります。
つまり、あなたが法定相続人である場合、何も手続をしないと、不動産の管理義務や、固定資産税の支払義務を自動的に背負うことになるのです。
たとえば、管理義務のある実家が倒壊して、隣家や通行人に損害を与えてしまうと、共有者の一人として損害賠償責任を問われるおそれがあります。
特に、実家が地方にあるなどの理由で継続的な管理が難しい場合は、相続放棄を検討されたほうがよいでしょう。
相続に関わりたくないときに弁護士に相談するメリット
「相続に関わりたくない」とお考えの場合、弁護士へ相談することで、その悩みの大部分を解決できます。
弁護士へ相談する主なメリットは以下のとおりです。
面倒な手続を任せられる
時間と手間のかかる戸籍謄本の収集や、申立書類の作成・提出などを代わりに対応してもらえます。
ほかの相続人との窓口になってもらえる
弁護士がほかの相続人とのやり取りを代行し、必要な交渉や事務連絡を任せられます。
法的観点から最適な解決策がわかる
正確な法律知識や豊富な経験をもとに、「本当に相続放棄が最適か?」などを検討し、最適な解決策を提案してもらえます。
相続のことでお困りならアディーレへ
相続が発生すると、さまざまな手続が必要になります。面倒な話合いや、裁判所とのやり取りが必要になることもあるでしょう。
しかし、「関わりたくないから何もしない」というのはおすすめできません。
ご説明してきたように、相続放棄などの手続を必ず検討すべきです。
自分で手続をするのが面倒だったり、不安があったりする場合は、ぜひアディーレにご依頼ください。
相続に詳しい弁護士があなたの代わりに手続を行うため、時間や手間をかけず相続放棄を進めることができます。
相続や相続放棄に関するご相談は何度でも無料ですので、ぜひ一度お問合せください。

- この記事の監修者
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- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。